「歯みがきをなまけて歯周病になるのはわかるけど、まさか死にはしないでしょう?」と思われる方が多いでしょう。ところが、実は歯周病の原因菌は、気道や血液を介して肺や全身へ廻り、心臓病や動脈硬化、肺炎などの発症や糖尿病のコントロールへの悪影響、そして、早産や低体重児出産などの一因となっていることがわかってきたのです。

したがって、歯周病は単に口の中だけの病気ではなく、全身の健康と大いにかかわる病気でもあるのです。歯周病を予防し、もしかかってしまっても早期発見・早期治療でなおすことが、全身の健康管理のためにも大変重要です。

歯周病と心臓病

歯周病になると、その原因となる細菌が血中に入り、細菌性心内膜炎など心臓に感染を引き起こす場合があります。
また、細菌が心臓の周囲の冠動脈に入り込むと、血栓ができやすくなり動脈硬化へと進行する可能性もあります。

歯周病と糖尿病

糖尿病は歯周病と関連の深い病気です。糖尿病が歯周病を悪化させ、歯周病が糖尿病を悪化させる悪循環がおこります。血糖値が高い状態が続くと、歯肉の炎症が悪化しやすくなります。血糖値が高めの方は、生活習慣の改善を心がけると共に、歯周病のチェックも忘れずに受けましょう。

歯周病と骨粗鬆症

骨の組織がまるで「す」が入ったようにスカスカになる病気、骨粗鬆症も歯周病のリスク因子です。骨粗鬆症になると、歯周病の進行するリスクは2倍にも高まるといわれています。特に女性は閉経前後から全身の骨密度の低下が顕著になり、骨粗鬆症の発症率も50代から急増しますが、歯周病で歯を失う割合が高まるのもこの年代です。

歯周病と低体重児出産・早産

妊娠するとつわりなどで歯みがきが満足にできず、口中の衛生状態が悪くなりがちですが、その他にも、血中に増加する女性ホルモンを利用して増殖するある種の細菌が原因で、歯肉の炎症が起きやすくなります。一方歯周病の患部から炎症性の物質が血中に入り、胎盤を刺激すると、胎児の成長に影響したり、子宮の収縮が促されて低体重児や早産のリスクが高まることがわかっています。

歯周病と肺炎

高齢者の死因で、脳卒中に次いで多い肺炎ですが、その発症とも歯周病は深い関係があります。体力が衰え、せきをする力が弱くなると、食べ物が誤って気道に入り、歯周病の原因菌などが肺や気管支に入り込んで感染(誤嚥性肺炎)してしまいます。

歯周病とタバコ

タバコが成人のあらゆる慢性疾患の原因となっていることは明らかですが、歯周病のリスク因子の中でも、タバコは高血糖と並んで最も大きな影響を及ぼします。折角歯周病の治療を受けていても喫煙の習慣を止めないでいると、治療の効果が得られません。タバコは歯周病の進行を早め、ひどくします。