厚生労働省の調査によると、50歳以上の国民は10年間に平均5.4本の歯を失っています。これに対し、定期的に歯石除去や歯面清掃などのケアを受けている人たちを調べると、10年間に平均0.7本の歯しか失っていません。

むし歯や歯周病のような慢性疾患は、悪くなるたびに治療を繰り返していたのでは、健康に決してプラスになりません。歯や歯ぐきの病気の多くは、細菌の感染症です。ひどくなるかどうかは、生活習慣や体質によって決まります。ですから、原因をなくし、生活習慣やからだの弱点を改善することが本当の治療です。そうすれば、年をとっても歯で苦労する心配はありません。慢性の病気では、予防が最良の治療です。

治療中心の医療から、軸足を予防に移すことは、世界の常識です。英国や北欧では、大人になるまでは歯科医療は無料です。子供においては予防中心の医療です。逆に大人の場合、いったん治療になると高額の患者負担になるので、多くの人は自分の身と財布を守る予防管理の為に歯医者さんに通院しています。

日本では、健康管理のために歯科医院を定期的に利用している人はまだわずかです。それもいったん歯を悪くして時間とお金をかけた人が、健康管理の大切さに気づいて通っているのが実状です

ところが、調査によると、健康管理の受診経験のある人のうち95%もの人が、今後もそのような通院を続けると答えています。悪くもないのに歯医者に通う。これは一見不必要で面倒なことのようですが、その価値を知りその気持ちよさを経験した人にとっては、まるで美容院で髪をセットするような習慣になっているのです。